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セガハードストーリー

第2回

本格的な家庭用ハード開発時代へ

2017.09.11 掲載

今までアーケードゲーム業界で戦ってきたセガは、『SC-3000』/『SG-1000/Ⅱ』で実績を上げたことで、本格的に家庭用ハード戦線へ歩みを進めていく事になります。
今回のハードストーリーではセガハード3代目となる『セガ・マークⅢ』の誕生から話を進めます。


アーケードのノウハウが反映された『セガ・マークⅢ』誕生


セガ・マークⅢ

『SC-3000』/『SG-1000』の発売から2年目となる1985年10月、セガは家庭用ゲーム機3代目となる『セガ・マークⅢ』をリリースします。
この『セガ・マークⅢ』は前作ハード『SC-3000』/『SG-1000/Ⅱ』のソフトも遊べるようにカートリッジスロットを備えつつ、さらにカード型の「マイカード マークⅢ」専用スロットも追加されました。
この長方形のスリムなボディにコントロールパッドが2つセットされたスタイルは『SG-1000Ⅱ』から引き継がれたものです。

また『セガ・マークⅢ』の大きなポイントは、3代目にしてついにハード性能の大幅なパワーアップが図られたことです。
セガは家庭用ゲーム機事業と、アーケード事業を並行して行っており、『セガ・マークⅢ』はアーケードタイトルが家庭で遊べることをより一層アピールするべく、業務用アーケード機向けに開発したシステム基板『システムⅡ』のゲーム移植を想定して設計されました。
グラフィックを大幅にパワーアップし、スプライト(画面上で動く図形を表現する手法)の色数の強化や表示可能枚数の倍増がなされ、背景用のバックグラウンド(BG)画面のスクロール機能が強化、より高品質なゲームを楽しむことが出来るようになりました。
これまでの汎用ICを組み合わせたハード構成から、家庭用に特化し本格的に開発されたハードへと、セガとして新たなステップを踏み出したのが『セガ・マークⅢ』なのです。



ファンタジーゾーン パッケージ

発売後、家庭用ゲーム機向けタイトルもどんどん大容量化への道を歩んでいきます。
1986年6月、セガは「1Mゴールドカートリッジ」をマークⅢの専用ソフトに投入します。
「1Mゴールドカートリッジ」の採用により、ゲームセンターで人気を博していた『ファンタジーゾーン』が移植されたことで、『セガ・マークⅢ』の注目度はさらに高まっていきました。


さらに先を行くアーケードゲーム、追いかける家庭用ゲーム機

『セガ・マークⅢ』発売の半年前、セガはアーケード向けに『ハングオン』をリリースしていました。
これに始まる体感マシンシリーズでは、アーケードならではのダイナミックに可動する大型筐体とともに、情報処理を行う中枢部分(CPU)に当時としてはとてもハイスペックな『MC68000』という16bitのCPUを搭載するようになります。
1985年12月には『スペースハリアー』をリリースし、スプライトの縮小機能など、高機能なハードウェアを投入して爽快なゲーム内容とスピード感あるビジュアルを実現していました。
これにより、同年2月に施行されたいわゆる風営法の改正によるゲームセンターの営業時間短縮の影響(深夜0時まで)による売り上げ低下を跳ね返すほどのヒットを飛ばします。


  • ハングオン

  • スペースハリアー

一方家庭用の『セガ・マークⅢ』はアーケードゲーム移植を想定して開発され進化を遂げましたが、CPUは8bitで、『セガ・マークⅢ』が店頭に並ぶ頃には、アーケードゲームは更に進化が進んでいました。
作を重ねるごとにハードウェアを強化していったアーケードゲームのパワーアップは、一度発売するとしばらくはハードウェア構成を変更しにくく、コストも重視しなければならない家庭用ゲーム機との差をより広げることとなったのです。

そこで、家庭用ゲームの開発においても、限られたハードウェアの機能を使いこなしながら、斬新なアイデアを取り入れることで、アーケードゲームの楽しさを家庭用ゲームの世界に持ち込むチャレンジが行われていきました。
1986年12月に2Mゴールドカートリッジを採用して発売された『セガ・マークⅢ』版『スペースハリアー』は、スペック的に移植は難しいと言われたアーケード版を再現するため、本来背景に使われるBG画面を高速に書き換えることで、巨大な敵キャラクターを表現してファンを驚かせました。
こういった工夫により、『セガ・マークⅢ』はとくにマニアックなユーザーの支持を獲得していったのです。

  • スペースハリアー ゲーム画面

アーケードで大好評となった体感ゲームシリーズ『アウトラン』、『アフターバーナー』も1987年に『セガ・マークⅢ』版が登場しています。

家庭用ならではロールプレイングゲームなどの登場

また、この時代は、家庭用ゲーム機でしか遊べない、オリジナルのタイトルがユーザーに認知、評価されていった時期ともいえます。
1985年に登場した任天堂の『ファミリーコンピュータ』向けソフト『スーパーマリオブラザーズ』の大ヒットにより、ファミコンは家庭用ゲーム機におけるシェアをゆるぎないものにしていき、さらにアーケードゲームとはまた違ったジャンルのゲームが徐々にその数を増やしていきます。
その一例が、プレイ時間を気にすることなく遊べる、ロールプレイングゲーム(RPG)です。
もとはパソコン向けにリリースされたゲームに多く見られたジャンルでしたが、ファミコンの普及とともに100円1プレイの感覚とは違う、ゲームセンターでは遊べないタイトルも増えていきます。


ファンタシースター パッケージ

セガも1987年10月に『覇邪の封印』、12月に『ファンタシースター』といった『セガ・マークⅢ』向けのRPGをリリースします。
『ファンタシースター』はセガオリジナルのRPGとして、4Mの大容量「ゴールドカートリッジ」を採用、滑らかに動く3Dダンジョンを実現してユーザーを驚かせ、以降セガのRPGの代表的シリーズとなっていきます。
アーケードゲームだけでない、セガのファンが徐々に増えていったのが『セガ・マークⅢ』の世代ともといえるでしょう。

また、この時期に特筆すべきことはもう一つあります。
『セガ・マークⅢ』をさらにパワーアップしたアーケード向けのシステム基板『システムE』が登場し、『セガ・マークⅢ』向けに開発された『ファンタジーゾーンⅡ』がアーケード向けに再リリースされるという逆転現象が起こり、コストの安さから小規模店舗などに普及していきます。
アーケードから家庭用へ、家庭用からアーケードへ。両方を手掛けていたセガだからできたこと、それがこの時期から始まっているのです。

『Master System』海外展開。ヨーロッパや南米で成功


光線銃 ライトフェザー

『セガ・マークⅢ』は、日本で発売された後、翌年以降から北米、欧州、南米など海外に向けても販売を開始。その際、黒と赤で構成された筐体カラーをはじめ変更が施され、『Master System』として流通、日本で発売されなかった光線銃なども海外向けにリリースされました。
特にTV放送方式が日本や北米と異なるヨーロッパ、そして家庭用ゲーム機がまだあまり普及していなかった南米において『Master System』は売上を伸ばしていきます。

また、『アレックスキッドのミラクルワールド』をはじめ、『セガ・マークⅢ』世代に登場した「アレックスキッド」が活躍するゲームはヨーロッパにおいてヒットし、後継機『メガドライブ』が発売された1990年代も、海外版のみの新作『Alex Kidd in Shinobi World』が販売されたり、 小型化された『Master System Ⅱ』に『アレックスキッドのミラクルワールド』が内蔵される形で販売されるなど、息の長い製品となり、『Master System』とアレクは現地でのセガのイメージを形作っていったのです。


箱にアレックスキッドが描かれたMASTER SYSTEM Ⅱ
日本版『マスターシステム』登場


マスターシステム

アーケードゲームの進化は、ここまでご紹介した以外にサウンドにも発揮されていました。
セガはアーケードにおいて、『ハングオン』から『アフターバーナー』へとハードウェアを進化させる過程で、きらびやかで金属的な響きのFM音源と、楽器音などをデジタル形式で録音して再生するPCM音源を採用し、その優れたサウンド性能にもファンの注目が集まるようになっていきます。

その流れを受け、日本向けの『セガ・マークⅢ』もパワーアップが計画されました。
日本版『マスターシステム』は、FM音源を内蔵しサウンド面を強化、また立体視を可能にする「3-Dグラス」の接続端子が標準装備され1987年10月に発売されました。


ザクソン3Dと3-Dグラス

「3-Dグラス」は日本では1987年11月に対応タイトル『ザクソン3D』とともに発売され、画面の中からキャラクターが飛び出したり引っ込んで見える「立体視」の世界を実現。
日本では『メイズウォーカー』、『スペースハリアー3D』、『ブレードイーグル』までの4タイトルでそのラインナップを終えますが、海外向けには『OutRun 3-D』などのタイトルが発売されています。

『セガ・マークⅢ』『マスターシステム』の功績、そして次のハードへ

『セガ・マークⅢ』と『マスターシステム』は、セガが世界への足掛かりとして多地域に送り出した家庭用ゲーム機として、1,900万台ほどが販売されたと言われており、SC/SGシリーズよりさらに大きな実績を残しました。
前述のヨーロッパをはじめ、特にブラジルにおいては、1990年代後半までセガよりライセンスを受け代理店を務めたTectoy社により、本体およびソフトが発売され続け、家庭用ゲーム機として長い間愛される1台となったのです。
また、SC/SGシリーズ~『セガ・マークⅢ』/『マスターシステム』の世代は、数多くのカセット交換式家庭用ゲーム機が生まれ、そしてその多くは姿を消していった時期でもありました。

そして、家庭用ハードの時代は8bitから16bitへとステップアップしていくことになります。

「第3回」へ続く