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2025.07.30
アーティスト・河村康輔氏と「ソニック」クリエイティブディレクターの星野一幸が対談…SEGA STORE TOKYO オープン記念商品を語り合う

7月18日にオープンするセガ日本初となる旗艦店舗「SEGA STORE TOKYO」。文化・流行の発信地・渋谷PARCO 6階に、その世界観を体験できる空間が生まれ、ここでしか買えない商品「ソニック・ザ・ヘッジホッグ × 河村康輔 SEGA STORE限定トイ」が販売されている。セガを代表するキャラクター「ソニック・ザ・ヘッジホッグ」と、世界的なコラージュアーティストの河村康輔氏はどのようにコラボレーションに至ったのか。「ソニック」クリエイティブディレクター星野一幸との対談で、その舞台裏が見えてきた。河村氏の語り口もなんだか楽しそうだ(取材:6月26日)。
コラボの舞台裏…「この人しかいない」

やっぱりSEGA STORE TOKYOが出店する渋谷PARCOは、日本のポップカルチャーとアートシーンを結びつける象徴的な存在です。6階フロアには世界中からお客様がいらっしゃり、まさに日本を代表する文化・流行の発信地点です。そんな場所でコラボレーションをするにあたって、同じようにアートシーンとポップカルチャーを結びつけている河村さん、この人しかいないという考えの下、今回の企画に至りました。
いや、そこまで言っていただけて嬉しいです(笑)。
もう迷うことなく、ご一緒したいと思いました。ソニックは本当に子どもの頃からすごく身近にあったキャラクターですし、自分もゲームをプレイしていました。大人になってからもいろんなハードで新しく展開されるたびにプレイしましたし、映画も見ました。
だから、オファーは光栄でしたし、逆に僕でいいのかと思ったぐらいです。最近はやらないようにしていますが、ゲームは夜通しやってしまうタイプなので。(笑)。
アハハハ(笑)
本当に、お話がすごい嬉しかったです!特に今回、デザインしたものがぬいぐるみという立体物として作っていただけるということで、僕はほとんど携わったことが無かったジャンルでした。初めて携わる立体物がソニックになるというワクワクも大きかったです。お話をいただいて最初の打ち合わせで「どの素材を使っていいですか?」とすぐに質問したぐらいです(笑)。
その感想をうかがえて本当に良かったです!ゲームカルチャーはポップシーンの一つかもしれませんが、アートシーンとは違う分野ですよね。アートに造詣の深い方がどんな目線でソニックを見て、表現されるのかは僕も興味深いところでした。
でも、河村さんがソニックのゲームで遊んでいただいている体験が、今回のコラボレーションには大きく作用したと感じています。
SEGA STORE限定トイが生まれるまで。
「すごく自由にデザインを作りました」

やっぱり、キャラクターにはファンの皆さまがいて、ソニックで言えば34年の歴史もあるので、僕の中では取り扱いが慎重になるジャンルと考えていました。ですが打ち合わせで、基本的に「河村さんらしさを出して、好きにやってください」と言っていただけたんです。
それで僕も気が楽になって、すごく自由にデザインを作りました。制作中は、本当に楽しくて自分の好きな、自分が欲しいなって思うコラボレーションを目指していたら、デザイン案もいろいろなパターンができて、自分でも決められなくなって……。「全部できませんか?」とお話ししたぐらいです(笑)。
そこまで楽しみながら、やりたいことをやっていただけて、もう今回のコラボは成功したぞって実感しましたよ。
本当に制約が無くて、純粋に作品づくりができたんですよね。今回のデザインで一番こだわったのは、ソニックの柄です。コラージュという技法を使っているのですが、ただキャラクターの集合体にするのではなく、引いて見るとちゃんとソニックが見えて、近くに寄ると全てのキャラクターがいる構成です。これは僕が得意としているシュレッダー技法と同じでもあるんです。
だから、ぬいぐるみも店頭で遠くから見たときに「あそこソニックのぬいぐるみあるね」と思って寄っていくと「柄が違うじゃん!」となると思います。そんな遊び心を意識して作りました。
河村さんの作品は平面が中心ですが、ぬいぐるみになると造形が先に見えてきて、平面とは見え方の順番が違うんですね。毎日見ているソニックのロゴが、シュレッダーされた状態でテキスタイルになっている。パッと見ると「この色味は知ってるな」と思って、よく見ると「あ、これロゴだ」という発見がありましたよ。
あと、テキスタイルになったときの面白さも感じました。自分のコントロールが効かないところで柄がカットされて、パーツがぬいぐるみとして組み上がってソニックになっていきますから、自分の手から離れて、もう一度コラージュされた状態になっているんです。
それが新鮮でしたね。全く同じ個体が仕上がらない。要は全てが一点物になる。僕が手作業でやるアート作品に通じるところもありました。ぬいぐるみを家に迎え入れたときに「その子しかいない」という特別感があると思います。
キャラクターはぬいぐるみのような立体物になるとよく命が宿ると言われます。平面とはまた違った魅力がありますね。お客様には店頭で気に入った柄を手に取って、吟味して、「この子が好き」という一体を見つけてほしいなと思いました。
創作の原点回帰…「すっごい楽しい」という感覚

久しぶりに、子どもの頃にゲームをやっていたときのようなワクワク感でものづくりができました。ゲームをクリアしたくて何度もトライするような感覚で、デザインを何度も繰り返していく感じです。
ものを作るときに楽しくないとしんどいんですが、この「すっごい楽しい」という感覚は、どうしても慣れてきてしまうんですよね。でも、今回は早く学校から帰ってゲームをやりたいという、あの遊んでいる感覚にすごく近かったです。この仕事を始めて25年が経つのですが、童心に帰ったものづくりというか、原点に立ち返ることができました。今後の20年も、仕事を楽しめそうです。
ゲームで言えば、一回やってスタートに戻ってきて、裏面に入った感じがします(笑)。
なるほど!
でも、この「すっごい楽しい」という感覚──それも子どもの頃の感覚は、キャラクターの強さから来るものなんでしょうね。年齢とか関係なく、ピュアに楽しめるフィールドを作っていただいて、自分的にも新しい発見がいっぱいありました。
河村さんのクリエイター観にも繋がるようなコラボになったんですね。作品を拝見すると、クールでカッコイイ世界観の作品が多いですが、今回はゲーム好きな河村さんが本当に楽しんで、らしさを出して、100パーセントで生まれた作品になったということですね!
もう100パーセント以上のものを出せました!
日本から世界へ…クリエイターの登竜門になる期待

海外からお客様が来るフロアに、日本を代表するキャラクターたちが出ていく舞台ができるのが素晴らしいですよね。今後の若いクリエイターや新しいキャラクターたちの登竜門になる可能性が十分あります。海外観光客の皆さんはもちろん、世界中のクリエイターが渋谷PARCOを目指して作品を生み出すような機会になれば、とても意義深いと思っています。
僕も、世界に発信するプラットフォームになると思います。キャラクター文化は日本がとても強い分野ですから、今回のようなコラボが別のアーティストに変わっても、渋谷PARCOから海外に向けて作品が出ていく。そういう場になってくれると作り手として嬉しいです。
SEGA STORE TOKYOは、ユニークなストア体験ができるような作り、演出にもなっています。コラボのぬいぐるみを買う体験を含めて、お店でセガの世界観を楽しんでいただけると思います。ぜひ、お店に来てください。
本当にお店に来て、ぬいぐるみを手に取ってほしいですね!
今回はぬいぐるみという形で、河村さんにとって新しい挑戦となりました。また何か新しい表現方法、例えば彫刻のような立体作品で、河村さんにとって違うワクワクを感じていただけるようなコラボができたらいいですね。
ぜひやらせて欲しいです。立体物は本当に好きなんですが、自分が制作する機会はあまりないんです。
例えば変わった素材で陶器はどうですか。子ども向けはぬいぐるみ、大人向けの素材違いで挑戦的なものを作るなど、振り幅のあるキャラクターグッズはあまりないかもしれないですよね。ぜひ、お願いします(笑)。
持って帰るのが大変そう(笑)。
