インタビュー・小玉理恵子

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小玉さんにとっての『ファンタシースター』

─  ユーザーの間では不可解なイベントとして名高い(笑)、「ダンジョン奥深くのショップで買った“あまいもの”を総督に持っていく」イベントですが……

あれはどなたが作ったんですか?

■  うーん、企画の“お手紙チエちゃん”だと思うんだけど……。当時はなんでもかんでも難しくしようという風潮があったと思うんです。エンカウント率(敵の出現率)も高いし。

だから、「難しいものに挑戦してこいよ」、というスタンスで作られたイベントだと思います(笑)。

─  3Dダンジョンにすることは、企画した時から決まっていたんですか?

■  私が参加した時には既に企画されていました。

3Dダンジョンも、いくらでもなめらかにしようとすればできるんです。1個1個迫ってくるものをちょっとずつ描いていけばいいわけだから。

3Dダンジョン

おてがみチエちゃん&ゲーマーみき

前述のちょう子お姉さん、お手紙チエちゃん、ゲーマーみきちゃんは“セガ3人娘”と呼ばれた。
■  ただ、それだと絵の分量がものすごく多くなって(ロムに)入りきらないだろうというのもあったし、きっと綺麗に見えないよ、ということになって……それならプログラムでワイヤーフレームの3Dダンジョンを作れないか? ということで、中さんにワイヤーフレームで3Dダンジョンを作ってもらうことになりました。

ワイヤーフレームに絵をつけていくという方法で、なめらかに見せるためにはどの辺のコマを省いていったらきれいに見えるのか実験をしていたんです。

すると予想以上にダンジョンの中を軽快に走ることができました。今の何倍も速いくらいで、わざわざプログラムで走るのを遅くしたくらいです。……そういうわけで、ゲームを企画する時には3Dダンジョンにすることは決定していましたね。

3Dダンジョン

計算された動きを元に作られた3Dダンジョン。
─  小玉さんの考える『ファンタシースター』の世界観って、どんな感じのものですか?

■  企画もプログラマーも、それぞれの考えがあると思いますが、私はデザイナーとして、「世界のデザインをした者」として思っていたことがあるんです。

「ドラクエ」は純粋なファンタジーだなと思っていたので、そうじゃないものを作りたいと考えていたんですね。例えば、スターウォーズのような世界観…とは言っても、あの世界観すべてじゃなくて、ある部分だけなんですけどね。どの部分かって言うと、スターウォーズって、西洋の文化に日本的なものを取り入れるじゃないですか? SFなんだけど、ルークの着てるものが柔道着みたいなものだったり、ライトセイバーが日本刀のイメージだったり…。

このような「違う世界のものをひとつ持ってくる」というスターウォーズで学んだ部分を、世界観に取り入れたかったんです。だから、『ファンタシースター』には、SF的なメカも出てくるけど、人々は中世的な衣装だったら面白いんじゃないかと思ったんですね。そういう感じの世界観をイメージしていました。
『ファンタシースター復刻版』パッケージ裏イラスト

メガドライブ『ファンタシースター復刻版』のパッケージ裏イラストは小玉さんの作品。

「人物よりも背景を描くのが得意でした。学生時代も風景画みたいなのが多かったです。」

─  最後に、『ファンタシースター』で、一番お気に入りの絵を教えてください。

■  最後に1枚だけプレイヤーキャラ4人が並んでる絵が出てくるんです。

心に残る一枚

■  エンディングには絶対アリサたち4人の絵を出したいという話になったんですが、4メガの容量をほぼ使い切ってしまっていて、どこにも絵が入らない状態だったんです。
そんな状態で中さんがプログラムを詰めにつめ、「少しだけ容量を空けたので、これで絵をよろしく」と……。


それは本当にわずかな容量だったんですが、プログラムを整頓して容量を空けてくれた気持ちに応えるためにも、この絵をつっこんだんです。

■  だから、絵としては決していい絵ではないかもしれませんが、心に残っている一枚です。
小玉さんとファンタシースター

「『ファンタシースター』は、初めて作ったRPGであり、いまだに毎年なにかしら関わり合う仕事が発生しているので、“こういうタイトルだった”と過去形にできないタイトルのひとつです。」


2003.4.4 セガ・取材室にて  




リプレイコミック「小玉さんとファンタシースター」

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おもいでがいっぱい(読者からの投稿メールより)