Vol.62
07.02.15 更新
銀河の彼方からやってきた宇宙人が大暴れするアクションゲーム、PS2『デストロイ オール ヒューマンズ!』。元は洋ゲーながら日本人ユーザー向けに徹底的にこだわって翻訳(?)し、やたらに豪勢なスタッフ&キャストに発売前から話題騒然。制作者の小堤正人さんにその辺の説明をうかがいました。

PS2『デストロイ オール ヒューマンズ!』プロデューサー
小堤 正人(おづつみ まさと)
1998年にセガ入社。2005年にコンシューマに移るまで、PCやDVDタイトルを多数プロデュース。『ザ・タイピング・オブ・ザ・デッド』『再来!謎の円盤UFO』など。 コンシューマは『デストロイ オール ヒューマンズ!』がデビュー作。
『デストロイ オール ヒューマンズ!』について教えてください。
いままで宇宙人が攻めてきて、それを人類が防衛するというスタイルのゲームは数多くありましたが『デストロイ オール ヒューマンズ!』はその逆なんです。あくまでもプレイヤーが宇宙人。あるミッションを達成するために一人で地球に潜入するアクションアドベンチャー。
とは言ってもシリアスな話じゃなく、1950年代の古きよきアメリカを舞台にした、コミカルなバカゲーです。元々はアメリカのTHQが発売したゲームで、私はローカライズを担当しただけです。

▲フュロン星人の「クリプト」が、行方不明となった兄を探すべく地球に降り立つ。そこで初めて「ニンゲン」と遭遇する「クリプト」。一体どんな出会いとなるのか!?

▲ゲームでは、テレパシーやサイコキネシス、変身能力など宇宙人ならではの様々なアクションを使ってミッションをクリアしていく。
そのローカライズ内容が結構話題になっていますよね?
オリジナル版をやった時の第一印象が「もったいねぇ!」だったんです。ゲームの出来はいいし、グラフィックもすばらしい。でもエンターテインメントという視点で見ると出てくるギャグがまったく日本人向けじゃなかったんです。「こりゃセリフいじったらすごく面白くなるぞ!」ってもう直感でした。
ローカライズというのは、オリジナルに忠実に翻訳することだと思っている人もいるでしょう。そういう考え方もありますが、「その国で最も愛される仕様にする」ことこそ本来の目的ではないかと私は意識しています。コミカルな部分を売りにするゲームだったら、その部分を阻害する要因は修正しなければならない。だから日本人がストレートに楽しめる内容に差し替えることにしました。シナリオやキャラの性格までいじったのも同じ理由です。やるなら徹底的にやらないと中途半端なものとなってしまい、それは結果としてお客様の期待を裏切ることになっちゃう。
おかげで日本人のユーザー(だけ)が楽しめる作品なったと思っています。

▲このアイキャッチを見ただけで、ネタが「わかる人」はグッとくるだろう。ゲーム開始の時点からすでに独自のローカライズが反映されている。

▲キャラクターのセリフにもパロディー満載。誰もがわかるネタから、ディープなマニアだけがわかるモノまで幅広い。
主人公の宇宙人が関西弁でしゃべってますよね(笑)
関西弁好きなんです(笑)
まぁ普通のゲームとちょっと違うぞ、というアピールもしたかったというのもありますね。でも本当の理由は、関西弁がもつ独特のニュアンスなんです。きついセリフであっても素直に聞けちゃうんですよ。標準語だと「あいつを殺せ!」とか言わなきゃならないところでも「あのアホをどついたれ!」とか「いてこましたれ!」といえば残虐感が薄れるじゃないですか。このゲームは残虐性を売り物にしているわけじゃないから非常に好ましい言葉表現なんです。それに宇宙人同士が関西弁で話し合えば漫才らしく演出するのが容易なので、会話の途中で唐突にギャグを挿入しても違和感がない。キャラの位置もボケ担当とツッコミ担当が明確になるから感情移入もしやすくなる。いい事尽くめなんです。
もっとも、あくまでも「関西弁を目指した表現」なので、本場の関西人が聞いたらアクセント的に違和感があり、気持ち悪がるかもしれません。でも関西の人は心が広いから許してくれるんじゃないかと……(汗)。

▲山口勝平さんによる関西弁のマシンガントークでしゃべる主人公「クリプト」。どのセリフも必聴の内容!

▲母船でのやりとりも関西弁。相方(ツッコミ担当)もコテコテの関西弁で畳み掛けてくる。
セリフ変更だけでシナリオまで変えちゃうのは大変ではなかったですか?
実は意外とそうでもないんです。日本オリジナル吹き替えって最近だと「ビーストウォーズ」が有名ですけど、昔のアニメやドラマでは極々普通に行われていたことなんです。「チキチキマシン」とか「ドボチョン一家」とかね。
視聴者に馴染ませる作戦としては由緒正しき古典的な手法なんですよ。でもゲームの世界だとあまり見かけない。だから挑戦のしがいもありました。それに私個人の話で言えば2年前に「再来!謎の円盤UFO」というDVDを作った時に元フィルムにオリジナルセリフをかぶせて新規シナリオを作るという無謀な経験もしていたので心配はしていませんでした。


▲登場するキャラクターや展開はほぼ原作のママだが、絶妙なシナリオとセリフの変更によって別のストーリーとして完成している。オリジナルをプレイしたプレイヤーであれば、あまりの違いに驚愕すること間違いナシ!
スタッフやキャスト(声優)がすごく豪華だと言われていますが?
最初からかなりマニアックなところを狙いたいという意図がありました。そうなると宇宙人やUFOの正確な情報が必要となります。いい加減に作ると舐められちゃうから(笑)。
そこで自分の周りでもっとも豊富な知識を持っている人を考えたら、山本弘さんだったので相談したんです「協力してくれませんか?」って。他の人も同様です。軍事関係は佐藤大輔さんが最適だし、特撮やアニメ関係は氷川竜介さんだろうという感じで……。自分の知り合いで専門分野に詳しい人を引き入れたら結果的にこのようなメンバーになってしまいました。幸い皆さん大乗り気で引き受けてくれたんで、こちらの要望以上の仕事をしてくださいました。
声優に関してもいっしょで、始めから豪華にしようとは考えていませんでした。演技力とキャライメージ優先だったんです。脚本書きながらこのキャラだったら山口勝平さんだろうとか、この男は青野武さん以外考えられないとか……。キャラが登場した時、お客様がもっとも自然に受け入れられるようなキャスティングをと考えたらオールスターになっちゃった。もちろん個人の趣味も入っていますけどね。


▲外見のイメージ通りに配役された声優もいれば、予想外の声優が担当しているキャラクターもいる。ただ、いずれにしても超豪華なメンバーばかりで、ゲームやアニメに詳しくない方でも一度は聞いたことのある声ばかりではないだろうか。
ネタが濃すぎて若い人が付いて来られなくなるという心配はありますか?
実はそこが一番苦労したポイントです。
40年も昔のテレビ番組をネタにして誰が喜ぶんだって言われましたよ。でもね、自分の中では思いついたネタを好き勝手に組み込んだわけではないんです。「濃いネタ」と言われるものでも割とメジャーなものを優先的に選んだつもりです。この話なら特撮やアニメに興味があったら一度は観たり聞いたりしてるよねぇ……という基準。もちろんこんなネタ誰も気づかんだろう、というマニアックなものも愛好家向け(?)に入れました。その辺のレベル調整は大作RPG並みに苦労したかもしれません(笑)
あと、重要なのはネタがわからない人がプレイしても違和感無くスルーできるという点。すごく面白いネタであっても、それを知らない人がプレイした時に「ん?」とか思われたらアウトだと思っています。つまり大事なことは知らない人がプレイした時にネタであることすら気づかせないようなシナリオにすることが肝心だと。


▲ある意味、プレイヤーへの挑戦的なほど、細部までネタが用意されている。しかも、ジャンルがSF、特撮、アニメ、コメディなど多岐に渡り、すべてを理解できる方がいたとしたら、かなりの猛者だ。
最後にみなさんからメッセージをお願いします。

『デストロイ オール ヒューマンズ!』
2007年 2月22日(木)発売¥6,800(税込¥7,140)